お弁当


「留三郎、お弁当箱出してくれないと洗ってあげないよー!」

遅めの夕食を済ませそのままテレビを見ていると、後片付けをしている伊作から声が掛かった。そうだ、帰宅してジャケットだけ脱いでそのままメシ食って、まだ弁当箱出してねぇや。急いで立ち上がり鞄を開けて弁当箱を取り出す。弁当箱を包んでいる布を取り去ってキッチンに持って行くと、伊作が食器洗いを始めていた。

「今日も美味かったぜ、ごちそーさん」
「いーえ、お粗末様でした」

泡だらけの手でそれを受け取って、手際良く水に浸ける。最近、抱えている仕事が大詰めを迎えていて、料理は勿論家事はほとんど伊作に任せっきりだ。コイツだって自分の仕事があるのに、文句一つ言わないでやってくれていて、本当にありがたいと思ってる。毎日昼休みにはコイツの弁当を食べないとやってらんねぇ…あ、

「伊作、今日の卵焼き、甘いのとしょっぱいの両方入れたろ」
「うん、いつも甘いのだけだったから。もしかして不味かった?」
「全然。俺お前の卵焼きだけで飯3杯は食えるぜ」
「それは大袈裟だろ」

伊作は笑うけど、別に大袈裟じゃねぇ。俺はコイツの料理なんでも好きだけど、特に弁当に入ってる卵焼きは格別なんだ。適度に甘くて形が綺麗で口溶けがいい。しかも今日はしょっぱい味付けのも入ってた。桜エビを混ぜて焼いたソレは見た目も申し分なかった。…なんだか熱く語ってしまったが、俺がどれほど好きだかよく伝わっただろ?

「なー、明日も入れてほしい。後トマトも食べたい」
「トマト?あったかな、冷蔵庫見てみて」

言われた通りに冷蔵庫を開けると少しだがまだ残っていた。洗い物を終えた伊作も手を拭きながら後ろから覗き込んできて、もう卵も少ないねと中身を確認する。もうすっかり主夫のようでなんだか胸がくすぐったい。

「本当俺いい嫁さん貰ったわ」
「別にお嫁さんになったつもりないんだけど。男だし。結婚もしてないし」
「そーゆう気分なの!いいだろ」

一緒にリビングに戻りながら交わす言葉。確かに結婚は出来ないけど、一生をかけて幸せするつもりなんだぜ?これからもずーっとコイツの飯が食えますように。

「いつもありがとな」


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会社で愛妻弁当を食べるけまとめさん。微笑ましい!
卵焼き大好きで自分で色々と創作してます。なので伊作くんにもしてもらいました。
留三郎はいい旦那になりそうだ。
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